6/22/2009

伝統を守る難しさ


夏と言えば、浴衣ですね。
浴衣という言葉は、湯帷子(ゆかたびら)からきていて入浴専用衣でした。歴史を遡ると、平安時代の初期の『延喜式』のなかにも記述が残されているため、それ以前からあったものだそうです。
浴衣も時代の変遷をたどり、江戸時代の中期以降には一般庶民の間で湯上がりに浴衣を着ることが習慣化されました。ただ、木綿は当時とても貴重品で、麻などに比べて肌触りがよく、美しく鮮やかな色を染め出すことができ、湯上がりだけではなく夏の庶民の常着にもなりました。
浮世絵などで浴衣姿に団扇を持った女性が湯上がりをくつろいでいる姿が描かれているのを見たことがありますが、「昔の人は湯上りのひとときを大切にしたから」という話を聞いたことがありました。
そんな浴衣に欠かせないのが中形です。籠付浸染(籠染)は中形の一つです。
浴衣専門の藍染屋「中野形染」が、創業100年をむかえた2008年に最後の生産をやめました。籠染の技法を継承する全国で唯一の工場でした。
「輸入プリント地などの普及によって需要が落ち込んだため」と書いてある記事を読みました。
籠染めは、二本の円筒形の真鍮型を回転させ、その間に生地を通しながら、生地の表裏に同時に型付けしていきます。表と裏に柄があるので、反物はリバーシブルの状態ですが、使い方は違い、裏の柄が袖や裾からさりげなく別の模様が見えることにオシャレとした江戸らしい粋な贅沢な浴衣でした。
先日(6月20日)に、ニューヨークの美術館MoMAで、スイスの銀行UBSが主催するパーティがあり参加しました。不景気の最中であり、実際に銀行のほとんどが大赤字という話を聞きますが、MoMAのメンバーは無料で招待されました。UBSの方向として、会社自体が美術品をコレクションするだけではなく、芸術の取引をサポートすることを銀行の業務として行っているそうです。そのため、芸術家のサポート、発表する場を提供、そして今回のパーティのように芸術に触れる機会を作り、芸術に理解していただくようにしているそうです。
次代を先見し、重要な文化資産を築くUBSに支えられた芸術は沢山あったことと思います。
もし、このような考え方が、「伝統技法を守る」ためにも活用されたらと・・・願ってしまいました。
芸術は新たに生み出すもので、「伝統技法を守る」と言うこととは反対のように思われてしまうかもしれませんが、浴衣が平安時代から変遷を繰り返してきたように、次代につながる意味においては、芸術を生み出すことも伝統技法を守ることも同じだと思います。
日本で作られた浴衣が失われていくことはとてもさびしいです。
失われたものを取り戻すのはとてつもなく難しいと思います。
個人の範囲で考えられることではありませんが、次代につなげる文化資産を守ることの大切さに気がつくことが必要だと思いました。

*写真は、広重の神田紺屋町

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