10/31/2009

日本の雑誌からの取材を通して

日本の着物の雑誌「月刊アレコレ」からの取材の申し込みがあったのは、8月のことでした。
見本誌として送られてきたのは、小さな可愛い小冊子でした。
でも、その小冊子の中に出てくる内容の充実さには大変驚きました。池田重子さんの着物のコーディネートは斬新で、とても先を行っている感じがして、でもしっかりと脈々と受け継がれた着物そのものを感じるベースが静かに存在していました。そして、着物の職人さんたちの仕事、そして、こよなく着物を愛する人たちの情報が、沢山詰まっていました。
この雑誌の11月号「きものびと 十人十彩」コーナーに登場させていただくことになり、とても嬉しく、また、大変恐縮にも思いました。
編集長の細野さんから年内に日本への一時帰国があるか聞かれましたが、今のところ帰国を予定していないことを言うと、現地取材という運びになりました。
私の知り合いのNYのフォトグラファーの野口さんを細野さんに紹介いたしました。偶然なのですが、野口さんは日本の雑誌社からの依頼で、NY現地の写真を撮っている経歴も長く、とても話がスムーズに早くすすみました。
そして、9月5日のまだ夏の暑さが残る中、11月号向けに、袷の着物でニューヨークの五番街で撮影をしました。以前にもブログで紹介しましたが、この着物は、城間栄順作、琉球紅型の訪問着です。
この着物の色ですが、光により色の印象が変わります。写真で見ると、真朱色ですが、室内で見ると「深緋(ふかひ・こきひ)」色です。太陽の光が当たると、やはり艶やかな明るい「真朱」色に見えます。
深緋は「日本伝統色・色名事典」によると、茜に紫草を加えて黒紫みをもたせた濃い緋であるとのことでした。 飛鳥・奈良時代、最高位は紫で、次に緋色でした。(緋色は、褐色味の赤色といった感じです。)その間の色にあったのが、深緋で、官位四位を表す袍(ほう)の色とされていました。
地紋も細かく入っていて鞘四釜、布地は丹後縮緬の緞子です。
城間栄順さんの作品は、裾元から凜とのびる美しい花と、肩からはしなやかに枝たれ、そこに色彩豊かな愛らしい花々。
NY五番街のティファニー前で、この着物を着ての撮影が出来るなんて、こうした機会でもないと、ありえないことだと思いました。
そして、私の着付け教室のレッスン風景も撮影しました。
こちらの写真が、雑誌掲載に採用されなかったレッスン風景の写真です。生徒皆様真剣です。

今回の撮影に協力してくれた私の着付け教室の生徒さんたちに「このまま着物を着て、街を練り歩こう!」と言うことになりました。

先日、NYに月刊アレコレの11月号が届きました。
「きものびと 十人十彩」は3ページもありました。NY五番街でボーと立っている私の姿の写真と、撮影協力してくれた生徒さんたちと街を練り歩いた時の写真が載っていました。
急に思いついての着物を着ての4人で街の散歩(なかなか迫力が出るものですね)。撮影の範囲に入っていないと思って、皆様もリラックスして楽しんでいました。そうした時の方が、自然で、着物も様になって、とても素敵な写真でした。
また、記事の内容は、私が全米一位の携帯電話会社での広告で着物スタイリストをしたときのエピソードが書いてあります。
是非、月刊アレコレで見てくださいね。

今回の取材でご協力してくださいましたのは、フォトグラファー野口正博さん(Masahiro Noguchi)です。 ありがとうございました。

そして、撮影ご協力、皆様、ありがとうございました!!

10/20/2009

ミュージアムで帯結び披露


ワシントンDCのテキスタイルミュージアムで開かれたシンポジウム”From Kimono to Couture”では素敵な出会いが続き、素晴らしい出来事が起こりました。
最終日、show-and-tellと言うファイナルセッションでのこと、帯結びを皆様の前で披露する機会に恵まれました。

Kimonoと付くシンポジウムにもかかわらず、着物を着た人が登場することなく終わりそうになっていました。最終日の前日、アメリカ人の女性が、着物を持ってきたけど自分で着ることが出来ないと言うことで、私に相談をしてきました。
そして、せっかくなので皆様の前で帯結びを披露してほしいと御願いされました。
持ってきた物を伺うと、着付けに必要なお道具はほとんどそろっていませんでした。夕方、本当ならワシントンDC名物のクラブケーキを食べに行くはずだったのですが、そんな心に余裕もなく、ドラッグストアに行って、腰紐に替わりになりそうな2mほどの包帯を買い、洗濯ばさみを探し(アメリカって「洗濯ばさみ」がないのですね)帯板の代わりになるような厚紙、厚手のノートの表紙とか段ボール箱とか探しました。なかなか見つからないものですね。包帯と輪ゴムを買えただけでも、「なんとかなるかな?」と思えて、とても即興に近い状態で挑むしかありませんでした。
そして、帯結びを披露する当日、アメリカ人の女性が持ってきた物を見せていただくと、帯自体に芯が入っているようで堅かったので、なんとか帯板なくてもきれいな形を作れそうでした。そして、着物のサイズですが、「問題ない」と言っていたので安心しきっていたら、なんとほぼ対丈でした。はしょりを出せるか不安になるほどのある意味ジャストサイズでした。
でも、なんとか「はしょり」を作りました。腰紐が2本あったのがとても救われた気持ちになりました。伊達締めがないので、包帯を代わりに使ったり・・・、お道具はなければないで、何とかなるものだと思いました。
シンポジウムのファイナルセッションの会場は、美術館の庭園で行われました。生憎の雨で美しい庭園にテントを張ってしまっていましたが、それでも、会場は満席、立ち見が出来ていました。そこで、皆様が持っているジャパニーズに関する服飾(着物から現在のストリートファッションまで)コレクションを見せ合って、ファッション関係の大学の教授や、美術館のキュレーターがコメントしていきます。着物コレクションの時に私の出番がやってきました。
はじめは、帯結びをお太鼓で登場して、そして、着物について質疑応答があって、そして、そのあとに、お太鼓をほどき、変わり結びを披露しました。

その前日に、Liza Dalbyさん(今回のシンポジウムのメインプレゼンター)との素晴らしい出会いがあり、ランチをご一緒して沢山お話していたこともあって、当日、帯結びを私が皆様の前で披露しなくてはいけなくなっても、彼女が私の側にずっとついていてくれました。そして、着物についての質疑にもDalbyさんが応答してくれていました。私の経歴も皆様に紹介をしてくれました。彼女がいてくれたので、私も緊張することなく、帯の変わり結びを披露できました。腰紐が足りなかったので、自分のワンピースのベルト紐を抜き出して仮紐にしたりして、アメリカ人の観客の人たちの歓声が面白かったです。少しパフォーマンスが入ってしまいました。
変わり結びが出来上がって、皆様に見せると「OH!」と声が上がったので、とても形に出来てよかったと思いました。

最後の締めの言葉で、この美術館の最高経営責任者のMaryclaire Ramseyさんが「Hiroありがとう」と言ったときに、皆様の拍手がいっせいにわきました。とても感動して、呆然として、立ち上がって皆様の拍手に答えないと行けないのに・・・ちょっとホロッとして立ち上がることすら出来ませんでした。

帯の飾り結びの出来映えは、納得がいく物ではありませんでしたが、一本の帯でいろんな形が作られていくこと、
着物や帯、結び方一つ変えるだけで同じ着物と帯とは思えないほど多様な表情に変わる、それだけの素晴らしい可能性を秘めている帯結び、を伝えることができたのではないかと思います。

心通い合うメッセージを、形に作ることが出来てたような、会場と一体感が生れた帯結びを披露してよかったと思いました。




10/19/2009

人気作家Liza Dalbyとのランチ


テキスタイルミュージーアムでのシンポジウム“From Kimono to Couture”参加二日目、ライザ ダルビー Liza Dalbyとランチをご一緒する約束をしていました。
彼女は、今回のシンポジウムのプレゼンテーターで、主賓でもありました。そんな彼女とまさかランチをご一緒できるなんて、ランチをする席に着くまで疑ってしまうほどでした。

Liza Dalbyは、「芸者」のことを題材にした本を書き、最近、紫式部について書いた本が、日本でも高く評価されました。今回、”Hidden Buddhas”を出版したばかりです。
写真の本は、アメリカ人の着物好きの人なら必ずと言っていいほど持っている本です。彼女は日本文化の研究者でもあります。幼い頃から日本の文化に興味を持ち、彼女自身が佐賀に暮らし、京都で芸妓の修行をした経験があり、お話をすると驚くほど、「和の心ってこういうものなのかもしれない」と逆に私が凄く考えさせられます。
ランチの席に着くまで、今回のメインプレゼンテーターということもあって、いろんな人に声をかけられていて、二人で食事なんて無理なのかなって思いましたが、Liza自身が私のために作った時間だと言ってくれて、実現しました。
このシンポジウムに参加する前に、Lizaから「あなたのwebページが大好き」とメールでメッセージをいただいていました。ワシントンDCに向かう時から、Lizaに実際にお目にかかれるだけでもと、ワクワクしていました。

ランチでは、日本舞踊や能の話、そして、彼女が今課題としている「粋」について、アメリカ人にどのように伝えるかということで、話が盛り上がりました。
そして、彼女がとっても関心を示してくれたのが「能」の話でした。
私は以前、能を習ったことがあるのですが、能の先生が「観客に不親切な舞台」と面白いことを言っていました。見る側の観客の想像力を引き出すので、通常の舞台芸術のように一つの表現を分りやすく形にしてしまうより、形にしないことで各々の観客の想像力と感じ方に委ねるところを持っているのが、能舞台だと、そんな鑑賞の仕方を教えていただいたことがあります。そして、能シテ方(舞う主人公)は、舞台上で静止しているように見える時があるのですが、例えて言うのであれば、駒が高速回転しているような状態で、高速回転している時に駒が静止しているように見える瞬間に似て、実は、全身全霊で内なるところから高速回転しているようなテンションを秘めて能を「舞」のだそうです。舞う、そのテンションと観客が共鳴できる瞬間に、無限大の想像の世界は観客の心に各々の形で宿るのかもしれなくて・・・
こんな話をLizaにしたら、彼女が「私が、モヤモヤして言いたかったこと、あー、そう言うことだった。素晴らしい言葉ですね」と言ってくれました。 そして、彼女が最も好きな言葉を教えてくれました。世阿弥の「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず」
昔からの知り合いのように、Lizaととても共感・共鳴できることが多くて、でも、着物の縞の話では、お互いの解釈が違ったので、Lizaの視点で、もう少し縞模様について調べて見ようと思いました。話が尽きなくて・・・
いつの間にかランチタイムの1時間がアッと言う間に過ぎてしまっていました。
「ニューヨークに行くときは、着付け教室を見に行くわっ」とLizaが言ってくれました。
“えええー、本当に!?” と思いましたが、そう思えたことも、今の瞬間でさえ本当になっているもので、本当に起こる日が来るかもしれないですね。
「約束ですよ」とお話をして、次のセクションがはじまるので、cafeでお別れしました。

写真は、Lizaとご一緒にランチのあとにコーヒーを買っているところです。

10/17/2009

テキスタイルミュージアムシンポジウム一日目

ワシントンDC、昔、親と旅行で来たときは退屈な街だと思いました。
でも、今回、目的があったということも大きいのですが、さすがーーーワシントンDC、アメリカ首都だと実感しました。
ワシントンDCのテキスタイルミュージーアム Textile museum (染織美術館)で“From Kimono to Couture”と題したシンポジウムが開催され参加しています。

そして、シンポジウム前夜祭のレセプションに参加したら、なんと、藤崎一郎大使が出席されていました。
そして、来ているお客様も凄い客層!
ミュージーアムの中庭がパーティの本会場でしたが、生憎の雨にもかかわらずテントを張っての素敵なパーティ会場でした、写真はミュージアム内の、受付をしているところです。オシャレな人が沢山来ていました。

レセプション会場では、テキスタイルミュージーアムの館長さん、また、藤崎駐米大使とお話をする機会に恵まれました。
着物についての自分の夢をいろいろ語りましたが、「そういうあなたが着物を着ていないじゃない!」と藤崎大使から痛恨の一撃です。
すみません・・・荷物が重くなるのが嫌だったので・・・。

名刺を渡せて、そして、藤崎大使を含め多くの方から名刺をいただき沢山着物についてお話ができました。
夢を形にするって・・・形に出来るタイミングにアピールをどれぐらい出来るものなのかもしれなくて。でも、やはり、「確たる思いがあれば大丈夫!」とも思いつつの夜でした。

でも・・・着物を着ていくべきでした。

10/12/2009

Serizawa展のレセプションで


先日の10月8日、ジャパンソサエティーで、芹沢けい介の作品展が一般公開する前のプレビューレセプションがあり、参加してきました。
出展している作品の数が多く、凄く見応えがありました。
芹沢けい介は、染色工芸家で、型絵染の人間国宝です。工芸デザインの父と呼ばれる、柳宗悦に師事しました。

紅型の影響を受けたと言う芹沢の型染めした着物を見るのがとても楽しみでした。
まさに、紅型!と言えるような着物がありました。紅型の色差しで用いられる隈取と呼ばれるぼかしの技術(染料:赤・青・黒のいずれかで花の芯や葉脈の部分をぼかすように塗りこみ、色の調子を複雑にする手法)が使われる特徴が、芹沢作品に活き活きとしていました。
華やかな色彩の手法と工芸デザインナーとしての感性が際だっているのか、人が着用した時の立体感が、「華やかな色彩が際出たせるのだろうな」って、見ているだけでも、そんな着物の印象を受ける素晴らしい着物でした。

カレンダーや、ブックカバーなどのデザインもありました。
なんだか懐かしさを感じました。昔、祖父の家のこんなブックカバーがある本を見つけたことがあるなって・・・。

素敵な紅型手法の芹沢作の着物に出会い、またニューヨークに引っ越しをしてきてから大変お世話になっていた方との再会も重なり、とてもとても楽しい時間でした。

展覧会のリンク先
Serizawa: Master of Japanese Textile Design
in Japan Society, New York

写真はレセプションの様子。

10/04/2009

久しぶりのお稽古

日本舞踊のお稽古をニューヨークではじめました。
とても久しぶりの日本舞踊のお稽古です。

伺ったときに、調度、先生の舞台があるとのことで、その舞台衣裳を見させていただきました。
帯が、付け帯で、「吉弥」(引き抜き結びの貝の口)でした。

吉弥結び」は、延宝期(1600年代後半)の歌舞伎名女形であった上村吉弥が始めて結んだ帯結びです。カルタ結び(カルタを3枚並べた様なのでこう呼ばれ、男女の区別なく結ばれた)この、カルタ結びが変化された流れの上にある結びです。

帯結び、その結びのルーツをさかのぼると、原点はお相撲の「横綱にあり!」と言う笹島寿美先生のお言葉。
相撲の横綱の「雲竜型(うんりゅうがた)」と「不知火型(しらぬいがた)」の綱の結びに見ることが出来るそうです。(雲竜型は、片わな結びで、不知火型は諸わな結び)

舞台衣裳などを見ると、「いろんな帯結びや結びの表現があるのだな」と思いますが、常に原点に戻れるところを意識しています。なので、結びの原点である、横綱の結びをふっと思い出してしまいました。

お稽古しているところの写真がないので、今回は、昨年、ニューヨークに引っ越す数日前に見に行った相撲の写真です。両国国技館でした。
私は、着物を着て枡席でお相撲を見ました。





この時の土俵入りは、朝青龍は雲竜型の結びで、白鵬が不知火型でした。

なんと千代大海が横綱朝青龍に勝った試合でした。
座布団がいっぱい舞いました。
予測外のことは勝負の世界では常にあることですね。互いが真剣なのですから。

久しぶりの日本舞踊のお稽古、素晴らしい先生にも出会え、「潮来出島」のお稽古をいただきました。
今週もお稽古のお約束をいただき、今から楽しみでなりません。