12/30/2010

再生

先日12月26日の日曜日、観測史上6番目に多い雪がニューヨークの街に降り積もりました。26日に少しだけ外に出たのですが、日本の「細雪」と言う情緒のあるイメージにはかけ離れたドサドサとした降り方で視界がさえぎられるほどでした。
27日の月曜日には、マンハッタンの街が真っ白の雪に覆われていました。道に止められた車が雪に埋もれていて、自然の驚異に驚きました。
雪に覆われたバスが道路に放置され、交通が全面ストップ、道路の雪かきの車さえもはばかれるほどでした。

翌日、交通が止まっている閑散とした街の頭上には、雲一つなく太陽が燦々と降りそそぐ朝をむかえました。真っ白の雪に反射し空気がキラキラと輝き街中が眩しいほどでした。

自然の脅威、あっという間に街の機能をストップさせてしまうことに驚きながら、なぜか、前にブログ「伝統を守る難しさ」で書いた、「浴衣専門の藍染屋さんで、籠染の技法を継承する唯一の工場が創業100年をむかえた時に生産をやめた」ことを、思い出しました。
失う時は一瞬なのかもしれないと切ない気持ちになりかけた時に、道路に車が走っているのが窓から見えました。少ないですが、車が走っているのを見て、なぜかとても感動し胸が熱くなりました。
街の再生の力強さ、人の英知の凄さ・・・
自然の脅威や、流行と言う時の流れには逆らえないけど、人はそれを乗り越えて創成と再生を繰り返していたのではないのかと思いました。

「月刊アレコレ」と言う着物の雑誌が、昨年11月号を最後に休刊しましたが、今年の6月に復刊しました。私はその雑誌から取材を受けたことがあり、それがきっかけで休刊中も編集長の方と音信が続いていました。そして編集長の方からニューヨークで活躍しているアーティストの方をご紹介いただいて、素敵な出会いがあり、人との繋がりの素晴らしさを知る機会が今年は多かったです。

来年の予定が今からいろいろ入ってきています。
そして、年明け早々には、日本のテレビ番組(お正月特番)でアメリカで撮影があった時にタレントさんに着物の着付けをしたのですが、それがもうすぐ放映される予定です。
いろんなこと、これからの始まりに、胸が沸々としています。

街の復旧に向かう人たちの強さや、雑誌の復刊、「再生」と言う素晴らしさ、それはどんな分野においても人としての英知の強さを表していることで、
私も、これからの始まりに、浮き沈みながらかもしれませんが、「再生」と言う言葉を忘れないで日々前進したいと思いました。

今までを糧に、来年への始まりに、全力で進んでいきたいと思います。

12/11/2010

糸をつむぐことからキモノははじまる

「結城紬(ゆうきつむぎ)」(茨城県、栃木県)がユネスコの無形文化遺産の代表リストに、11月16日登録されました。

結城紬は私も大好きな着物です。世界に認められた感動をツイッターで直ぐにUPいたしましたが、ブログにUPするのが月を超してしまいました。
ツイッターで、結城紬が出来るまでの工程を動画でお知らせしたところ、その動画を見て涙が出たとメッセージをくれた方がいました。私も、とても感動いたしました。

結城紬が出来るまでには、17の工程があります。
図案設計、真綿かけ、なめし加工、糸つむぎ、かせあげ、目色染め、下糊つけ、整経(たてのべ)、墨つけ、糸くくり、本染め、本糊つけ、蔵通し(おさとおし)、はた巻き、機織り、検査、整理(糊落とし・伸子張り)

2年半前に結城紬の体験工房に見学・染め織体験に行ったことがありました。
全ての工程は、茨城県の結城市や栃木県の小山で出来上がることを知りました。
真綿を手にしたときの温もりは忘れられません。

17の工程の中でも、「糸つむぎ」には、結城紬の素晴らしさを凝縮していると思いました。
糸を引くときには、先ずは設計図を見て、糸を細く引くべきか太く引くべきかを判断するそうです。
糸をつむぐ方は、親指と人差指にツバをつけながら、少し撚りぎみにして、所定の太さに引き出します。
茨城の大里ふくさん(無形文化財)は、糸を紡いで50年を過ごした時の言葉に、「いちばん難しいのは、糸を平らに引くことでしょうね。糸が平らかどうかで、紬の善し悪しは決まってしまうんです」と泰流社発行「紬 素朴な美と日本的な味わい」の中で語っています。

真綿にしてから引くということは、切れぎれになった綿状の短い糸を寄せ集めながら一本にしていくので、引き加減や足し加減が難しく、平らに引くには、熟練した技術と指先の勘が必要なのです。

着物は、糸からはじまるのだと、結城紬の着物を着る度に思います。

着付け教室の生徒さんたちが、時々、「袖を通さなかった着物が、教室に通うようになって袖を通して、やっと日の目を見た」と面白いことを言ってくれます。
不思議に、着物が喜んでいるかのように伝わる時もあります。
何かしら機会がないと着物を着ようと思うことがないとは思いますが(特に海外で生活していると)、でも、眠っている着物があったら、先ず袖を通して欲しいなって思います。上手く着られなくても、袖を通すだけでも、見えていなかった世界が見えて来ると思うのです。

結城紬の動画はこちらです。
是非、ご鑑賞してくださいね。


参考文献
泰流社発行「紬 素朴な美と日本的な味わい」
講談社発行「人間国宝シリーズ43 結城紬」

ユネスコのwebページhttp://www.unesco.org/archives/multimedia/index.php?s=films_details&id_page=33&id_film=1669