2/27/2011

「美」を「芸術」にする難しさ:ローリーの作品作りに携わって

ニューヨークを拠点にフォトグラファー・アーティストとして世界的に活躍する、ローリー・シモンズ(Laurie Simmons)さんの「ラブドールday1-30」と言う展覧会がNYのSalon94で開かれております。「ラブドールday31」として「Geisha Song」と言うショートフィルムの作品がスペシャルバージョンで作られ上映されております。
この作品「Geisha Song」で、私はラブ・ドール(人と等身大のお人形)に「ゲイシャ姿」を作るため、全体のコーディネートと着物スタイリストとしての仕事を担当いたしました。コスチュームとしてのクレジットネームをいただき大変光栄でした。

ローリーシモンズさんから仕事のご依頼があった時に、「ゲイシャ姿を作って欲しい」とのことでしたが、こちらニューヨークでは、時々「着物姿」のことを「ゲイシャ」と呼ぶ方がいるので、「普通の着物姿なのか?」「芸者さんの姿を再現したいものが作りたいのか?」いくつか疑問点がありました。ローリーさんのイメージを大切にしたかったので、お話しをうかがうと、京都の舞妓さんや芸妓さんにやや近いイメージがあることが分かりました。
彼女のこだわっていた点は白塗りと簪。撮影当日は、私が持っている日本舞踊などで使う化粧道具(日本製「三善」)を、今回の撮影のお手伝いいただけることになったメイクアーティストの本田さんに使っていただきました。簪は京都の人に頼んで仕入れていただいた京都祇園「金竹堂」の羽二重(絹)から作られた簪です。
着物にもこだわり、紅色と黒の染めの中に、豪華に「向かい松喰い鶴」の柄が金糸刺繍されております。また、金箔の松葉丈が地紋のように全体にふりそそいでいます。

今回の作品を昨日ギャラリーで見せていただきました。その芸術としての完璧なまでの素晴らしさに驚きました。ご一緒に見に行った人が「着物があまり写っていないのがガッカリするね」と言っていたのですが、「逆にそれが良い!」と私は思いました。これはあくまでもローリーの芸術作品であって、着物のカタログを作っている訳ではないのです。
画像は写真の通り、肩から上ですが、こうしたフォーカスされたところだけを描くことの方が無駄に思える全体像が必要なのです。ラブドールに足袋まで履かせ草履まで用意いたしました。シリコン材質で作られているラブドールは45kgほどの重さがあり、正座の形を作るのも大人3人がかりでかなりの力がいりました。画像のうつっている範囲でいうと、ラブドールが正座しているのかさえ分からないのですが、私には正座した時に自然とかしげる首筋や肩の輪郭から正座姿がしっかりとイメージ出来ます。

茶道の美意識に通じる物を感じました。
いつかの茶席で師からいただいた言葉に「見えないところほど大切」と、そのお言葉が胸によみがえりました。
美しい朝顔を求め、邸内の一輪以外の全ての朝顔を刈ってしまう利休の世界観を一瞬感じたほどです。その一輪はそうした世界が存在しないと利休の求める美しさに到達出来なかったのだと思いました。
芸術として完成させるには、「見えないところほど大切」そういうことなのだろうなって改めてローリーの作品の仕上がりを見て思いました。

昨日、ローリーシモンズの「Geisha Song」の作品の素晴らしさに感動したことをローリーにメールで送ったところ、ローリーから直ぐに返信が来ました。
恐れ多くもローリーさんと心が通じ合えたように思えた素敵な「時」でした。

*このショートフィルムを含めてローリーの今回の展覧会のことはアメリカ各紙で取り上げられております。
ニューヨークタイムズ
http://tmagazine.blogs.nytimes.com/2011/02/21/artifacts-laurie-simmonss-love-doll/

大人3人がかりで形づくった正座姿。

2/18/2011

NYファッションウィークでのスーザンとのコラボ

NYファッションウィークの7日目の2/16に、アメリカのデザイナーであるスーザン・チャンチオロと私のコラボでのステージがありました。
ポスターでの告知は、スペシャルコラボレーションとして私の名前が載っていました。ポスターに名前が載ることは事前でお知らせがなかったので、嬉しさとともに驚きでした。

本日、スーザン(Susan Cianciolo) と私がコラボしたステージの写真が VOGUE Italia のwebサイトにもUPされています。

スーザンは日本の京都西陣「ひなや」さんのファブリックを使って、洋装にデザインしています。昨年の11月には京都に滞在していたそうです。
日本の生地から洋服をデザインし、さらに日本の世界観を表現したかったスーザンは、今回のNYファッションウィークでのショーで、私のことをスタイリストとして抜擢してくださいました。

ファッションショーの4日前にスーザンから突然連絡が入り、「ショーで着物が登場すると言うアイデアが浮かんだ」と言うことで、モデル2名とスーザン自身が着用する着物の合計三着を用意してほしいと言われました。
翌日スーザンのスタジオでミーティングを予定していたので、スーザンがイメージするカラーと、今回のテーマである「空」に関連する柄の入っている着物を選び、スーザンに写真を見せると、「グレート、グレート、Hiroに任せる」と言われ即決でした。

なので、ファッションショーの一番始めに登場するモデルさんが着用している紅藤色(ピンク)の着物は、実は私の着物です。まさかのNYファッションウィークのステージに自分の着物が登場するとは予測出来なかったです。

この着物は、東京の根津にある呉服屋さん「たこや」にお願いして、染めからオーダーした着物でした。染める前の白生地の時から地紋が豪華で気に入っていました。写真ではピンク色の印象ですが、他のピンクの色と重ねて比べてみると「藤色」の範囲に入る色合いなのです。八掛けを地味な色に変えれば、少々ご年配になっても愛用出来る落ち着いた色合いです。
白生地の時から地紋や染めの色など一から自分でオーダーした着物なだけに、NYファッションに登場するなんて自分が育てたものを見ているようで感動しました。帯や帯揚げの組み合わせはスーザンの「空」のイメージを崩さないようにパステルカラーで統一しました。

写真はスーザンとバックステージでの話合い中です。赤いワンピースを着ているのがスーザンです。まさにバックステージは戦場のようでした。
その前段階から少し混乱はありました。
ファッションショー3日前の打ち合わせの段階で、スーザンがデザインした洋服にも帯を結んで欲しいと言われたのですが、スーザンが出してきた物はストールのような長さのない普通の生地でした。「これでは帯のように結べない」と話すと、「これ使えるかな?」とスーザンが、仕立てる前の帯のような生地を8本ちかく出してきました。スーザンから「この中から、洋服に合わせる帯結びをする生地のセレクトはHiroに任せる」と言われ、デザインが変わったりしないのかな?と少々呆然、彼女の発想は奇抜で何を言い出すのか予測できないので、当日の現場入りの時間を早めて対応することにしました。
当日の現場入りする直前にも「子供にも着物を着せてみようかな」と言い出し、私がはじめて「それは難しいと思う」と否定的なことを言ったら、あっさり諦めてくれました。驚きの連続でしたが、ショーの寸前の寸前までアイデアが溢れ出るスーザンの姿を目の当たりにして「この人は本当に芸術の域に達する服をデザイン出来る人なのだな」って思いました。

着物の着付け3名と、スーザンがデザインした洋服5着にスタイリングと帯結び5名をしました。合計8着のスタイリングです。
6時に現場入りしましたが、9時のステージが始まっても、実は、バックステージでスーザンに着物を着せていました。
スーザンが着用している橙色の着物や帯をセレクトするとき、彼女のイメージする「空」の中に、橙色が含まれていませんでした。横山大観の図鑑をスーザンのスタジオに持っていき「日本の空って、こうした色合いもあると思う」とスーザンに見せたら感動してくれて「アメージン(素晴らしい)!」と言ってくれました。

洋服への帯結びですが、スーザンの服には一つ一つにテーマやストーリーがあります。それを丁寧にスーザンは私に説明してくれました。そしてスーザンのイメージに合うように帯をセレクトして結びも即興で考えました。写真のように、ユカに着くようにして、帯を引きずるスタイルを作ったりもしました。彼女の言う「大地からの恵み」から、私は黄金の稲を思い浮かべました。2つの帯と布を組み合わせました。
片言の日本語で私のスタイリングをスーザンが「すごいね」と言ってくれたのが印象的でした。

以下の写真は、5点の洋服をスタイリングと帯結びした作品です。


3ヶ月前、スーザンから私に直接連絡が入り、そして、お会いして、スーザンから「インスピレーションをあなたから得たい」と言っていただきました。その後、コラボすることになりましたが、今回のコラボを通してスーザンから私は沢山の素晴らしいインスピレーションを逆にいただくことが多かったように思います。


2/17/2011

アメリカの大学で着物の講義

在米ニューヨーク日本国領事館からの依頼で、ニュージャージにあるWilliam Paterson大学で2月15日に着物の講義をしました。

はじめの30分間、スピーチをいたしました。
内容は、
• What is Kimono?  着物について
• History of Kimono  着物の歴史
• Kimono and Japanese Culture  着物と日本文化
• Kitsuke, Kimono Dressing  着付けについて
• Introduction of My Work 自分の仕事を通して着物スタイリストとは・・・
以上をお話ししました。
意外にも、学生さんたちが興味を持ってくれたのは、アメリカで着物スタイリストとしての私の仕事内容でした。質疑応答の時には、私の仕事内容や私のバックグランドについての質問が多かったです。日本の服飾を研究していると言う学生さんもいたので、好きな分野での仕事をアメリカでも見いだして行くことへの参考になれればと思いました。

そして、学生さんたちの「着物を着てみましょう」ということで体験学習を1時間ほど行いました。

はじめて着物に触れる学生さんたちがほとんどでした。
着物を着ると言う「技術を伝える」ことは難しいです。

私は日本で和裁を習っていましたが、和裁の先生は、私が間違った縫い方をしていると、私が間違ったことに気がつくまでジーと待ってくれていました。手を貸してしまう方が、時間も短縮されますし簡単なのですが、そこをジーと待つ。私も着付け教室を持って人に教える立場になり、技術を教えると言うことの難しさ、ついつい手伝ってしまいたくなります。でも、そこを堪えて見ていると、一生懸命自分なりの感覚を得て行なおうとする生徒さまたちの姿を見てきました。
前に、発展途上国に日本から井戸を掘るボランティアの人のお話が東大でありました。講演の中での言葉に「自分たちで井戸を掘っていたら、教わる方は傍観者として見ているだけ。言葉の説明より出来なくても現地の人が参加して井戸を掘るように促したら、皆興味を持ってやっていることの”意味を理解しよう”として、試行錯誤して参加してくれる。そうしたことを繰り返しで自分たちが井戸を掘ろうと自立していく。」
モデルさんに着付けをしているのをデモストレーションして、体験する学生さんたちの姿を手伝いをしないで少し遠目で見ていました。体験者として学生さんたちが、着物を着るのが上手く出来なく困っていると「僕が手伝おう!」とヘルプとして登場してくれる学生さんが次々現れました。完璧な着姿を求めるより、着物に実際に触れることのほうが大切だと思います。
そして、自分たちで理解しようとすることや、手の感覚の記憶や、自分の中にある感性を養うことがの方が大切だと思います。
出来上がると不思議とそれなりの形になっているのではないでしょうか!
写真のように、このような着姿になりました。
教えに行った私が言うのも変ですが、自分にとってもとても学びのある授業でした。
授業が終わっても質問に来てくださったり、そして、着物を片付けていると手伝ってくれる学生さんもいました。
また、学生さんたちとお会いしたいです。

学生さんたちと集合写真です。