5/28/2011

東大「さつき会」で着物ワークショップ

私は東大出身ではありませんが、夫が出身のため、東京大学の女子卒業生の同窓会「さつき会」のアメリカ支部の方たちと音信がありました。私の仕事を理解し応援してくれるさつき会の方から、「着付けの心得」をお話しをしてほしいとご依頼をいただき、5月初旬に着物のワークショップを開きました。

一番はじめにお話しさせていただいたのが、着物の種類についてです。
私の着付け教室で着物のことが分かってきた頃の生徒様のご質問の中で一番多いのが、着物の種類の見分け方と着方についてでした。そのため、正式な場面で着ることの機会が多い「留袖」から、やや(準)フォーマルなところで着用する「訪問着」「つけ下げ」について、柄付けによる見分け方と、どのような場面で何を着ていくのかを、資料を配るとともにお話しいたしました。
また、十二単のお話しをもとに、重ねの色目とした色彩の考え方や、生地の素材から(織の着物には染めの帯、染めの着物には織の帯 ー基本とされていますが、必ずしもそうではありません)、着物の生地と色の組み合わせを実際の着物を前にワークショップいたしました。
色の印象だけではなく、生地(正絹や木綿、ウール、そして織や染といった技法の違い)、着物と帯の組み合わせが変わってくることは、実際の着物で組み合わせてみないと分かりにくいものですね。とても理解を深めていただきました。写真はその様子です。

実際にも着物を着てみて組み合わせについて体験学習をいたしました。着付けの技術もとても必要なことではありますが、着物や帯の組み合わせ方や、また、それらを着ていく場面を知ることも着物を着る上で必要でとても大切です。
また着付け教室に通ったことがある人の中から、「着付けの技術だけではなく、今回の着物ワークショップのように、知識としての着物のお話しが聞きたいといつも思っていたから今回とても充実していた」と言っていただき、とても嬉しかったです。

いろいろ詰め込み式でお話し過ぎてしまいましたが、一つ二つでも、何かお役に立てることを持って帰っていただけるといいなって思います。そして、着物と付き合えるきっかけになればと願っております。
参加してくださいました皆様、ありがとうございました。

5/18/2011

WAFRICA着物とHINAYA帯で作品撮り

着物のファッションショーでのイベントをする時に、京都西陣のHINAYAの帯とWAFRICAと言うブランドの着物デザイナーのセルジュさんから着物をお借りしておりました。
写真提供  Thomas Laurien

こちらは、先月のスウェーデンでの着物ファッションショーでの写真で、モデルさんが着用しているのはWAFRICAの着物に、HINAYAの金のファブリック(帯生地)をWAFRICAの帯の上に更に結んだものです。

こちらのWAFRICAの着物を打ち掛けのように使って何パターンかの着物や帯を組み合わせ作品撮りをしたいと、ファッションショーの時から思っていました。そのことを、着物デザイナーのセルジュさんにお話しし、作品撮りでの着物の使用許可をいただき、返却日も伸ばしていただきました。ファッションショーで長らくお借りしていた上に、私の作品撮りのために更に長くお借りできることになり、先月ヨーロッパからニューヨークに戻りさっそく撮影の準備をいたしました。

撮影に参加してくれることになったのは、最近ご一緒に仕事をする機会が多いメイクアーティストのAiさんと、Aiさんからの紹介でフォトグラファーのテルさんです。
テルさんが見つけてくれたスタジオは、少し廃墟な雰囲気のある面白いスタジオでした。

5月に入ってから撮影を行いました。こちらの写真は、撮影現場の様子です。テルさんの後ろ姿とモデルさんです。
はじめの切り出しとして、掛下の着物に、掛下帯で文庫を結び、そこに、黒のひなやのファブリックを、抱え帯のようにして巻きつけました。WAFRICAの着物を打ち掛けのように見せるための流れを作る上で、掛下だけのはじまりを一応入れておくほうが良いと思いました。

ファッションの写真にもストーリーがあります。
テルさんは「look and feel」と言う言葉を使っていました。ストーリーと言うより、その言葉の響きが素敵だと思いました。

WAFRICA着物を打ち掛けのように見せたかったので、ヘアセットは、とにかくボリュームある文金高島田のようにしていただくようにお願いしました。今回ヘアセットもしてくれるAiさんも共感してくれました。そして鼈甲風の花嫁用簪をつけました。
こちらの鼈甲風花嫁用簪は、卵甲で出来ています。さすがに今現在、本鼈甲をこれだけ一式そろえることは難しく、大変貴重で高価な物となってしまいました。
簪が沢山ならんでいる箱の中を見ているだけで、至福の一時です。

つい先日、作品の写真が出来上がってきました。
さっそく、WAFRICAのセルジュさんやHINAYAの伊豆藏様に写真をお送りいたしました。写真作品となったことを喜んでくれました。セルジュさん、伊豆藏様、ありがとうございました。

私は欲を言えば、もう少し時間があれば、いろんなストーリー展開が出来たように思いました。
セルジュさんデザインの着物と、HINAYAの帯は、表現の多様性を本当に感じます。限られた時間の中での撮影になりましたが、一期一会、こういう時こそ良い作品が出来るのかもしれないですね。

こちらが、作品撮りでの出来上がった写真で私が気に入った2点です。

Photographer: Teru Yoshida

Photographer: Teru Yoshida

5/14/2011

ゴッホ美術館で着物ファッションショー

アムステルダムにあるゴッホ美術館で、着物ファッションショーを先月の4月15日に行いました。美術館のイベントであるフライデーナイト(春の祭典)があり、私は、美術館側からのご依頼で「着物デモストレーション」を行いました。2部構成にし、前半「着物ワークショップ」で、後半は「着物ファッションショー」です。今回は「着物ファッションショー」について書き留めています。

ゴッホ美術館側が考えてくれていたのは、エスカレーターからモデルさんが上って来て、エントランスを舞台まで横断すると言う長いキャットウォークを用意したいということでした。あとは、キャットウォークでモデルさんたちをどのような構成で見せていくのかは私に任せてくれました。
帯 HINAYA KYOTO
長いキャットウォークは間延びしてしまう感じがして私としては少々心配でした。「お客様の入りにもよるのかな」と思っていましたが、想像していた以上の沢山のお客様にご来場いただき、大変効果的になりました。

イベントの前に、美術館側から図面などをいただいていたので、いろいろ舞台設定を考えてはいたものの、当日の舞台が実際に作られていかないとショーの構成を決定出来ない部分もありました。

今回のファッションショーでメインで登場する十二単、重さがトータル25kgほどあります(鬘も合わせて)。そのような重い十二単を着用して、長い距離のキャットウォークを歩くことは出来ないので、舞台脇に待機していただきファイナルでの登場といたしました。

私は、舞台演出の専門ではありませんが、大学で歌舞伎を研究していて、いろんな舞台を見る機会に恵まれましたが、インパクトが強い物ほど、長く見せる物ではないと思っているところがありました。第一印象の強いインパクトを人の心に残すことは大切です。十二単はファイナルでの登場だけにいたしました。

キャットウォークの最後に歩くのは、束帯を着用したモデルさんです。舞台には、十二単も登場し、着物を着たモデルさんたちもならび、写真で見ると可愛らしいですが、実際の舞台は、迫力が出ました。

いずれの3枚の写真とも、Linda Koleさんからのご提供です。Lindaさん、ありがとうございます。

着物ファッションショーの模様を作品としてビデオで作成し、一昨日、ビデオが出来上がって来ました。ぜひこちらをご鑑賞くださいね。


5/09/2011

オランダのゴッホ美術館で着物デモストレーション

アムステルダムにある国立ヴァン・ゴッホ美術館で「フライデーナイト」と言うイベントがあり、先月の4月15日に春の祭典が開かれました。美術館から昨年の10月にご依頼をいただき、その日、着物デモストレーションを行いました。
イベントの名前「フライデーナイト」と言う通り、金曜日の夜に開かれました。
日本からお越しになっている假屋崎省吾様の生け花のワークショップが6時30分から7時30分で、私の着物デモストレーションは7時45分から8時20分。
私は、生け花のワークショップの後に行わせていただいたので、假屋崎様が生けた花に囲まれて着物のお話しをさせていただける機会に恵まれました。写真は、その様子です。
沢山の方たちにご来場戴きました。

着物デモストレーションは2部構成にいたしました。7時45分〜8時05分までスライドを使って着物の1000年の変遷をお話しし、そして十二単の着付けについてのデモストレーションを行います。8時10分〜8時20分までは、着物ファッションショーです。

今回のブログでは、前半の十二単の着付けについてデモストレーションしたことについて、書き留めます。

今回、十二単の着付けのデモストレーションで登場する十二単は、皇太子妃雅子殿下の婚礼の時の衣装を再現したものです。

十二単は、重ねの色目が重要です。婚礼の時は6月だったので、重ねの色目は「花橘」、打ち衣(外側)から単衣(内側)にむかって、濃い山吹色、山吹色、白色、青色、薄い青色となります。写真で見ての通り、緑色に見えますが、平安時代「緑」は「青」に分類されておりました。
色彩についての概念ですが、単色の概念と言うより、重ねの色目(グラデーション)により、一つの色の概念とされておりました。
色は植物で表され、今回で言うと「花橘」と言う色合わせです。

ご来場いただいているお客様たちの中に、十二単自体を知っている人が少ないかもしれない上に、十二単の「重ねの色目」を説明して伝えることが出来るのか不安でしたが、植物から色彩感覚を得る感性は多くの方々から共感をいただきました。「花の都であるオランダだな」って思いました。

写真 Linda Koleさんより
今回の十二単は、青梅きもの博物館から出ております。また、十二単の着付け師(衣紋者役)として、着付けをご披露してくれるのは、私の恩師である駒込和装学院の小田嶋洋子先生です。写真はその様子です。
通常二人で御方様をお着付けいたしますが、今回は私は補佐として、小田嶋先生に一人二役していただきました。
写真を見ていただくと分かりますが、小田嶋先生の着付けをする時の所作が美しく静止画になった時に鮮明な先生のお姿の美しさに驚きました。

十二単の着付け(五衣から表衣)までを披露いたしました。表衣(一番外側の着物)の着付けが済むと、十二単の御方様役のモデルになってくれた人の後ろに小田嶋先生が正座をしてしまいました。
先生に「立ち上がってください」と何度となく合図をしましたが、十二単の前には立つことが出来ないご様子で、それだけ心が入って着付けをしていることが伝わりました。
そして、最後に小田嶋先生が、立ち上がってお客様の前でお辞儀すると、強い拍手が会場から沸き起こりました。

着物は人様が着てこそ存在し、着る方への敬意、「着付け」に心が自然と入っていくこと、着物を作る人や、着物そのものに慈しみの心が宿れば自然と備わる美しい着付けの所作だと思います。
先生の着付けはただ技術だけを披露するのではなく、最も大切な着付けの「心」をオランダで伝えていただいたように思います。

そして、先生のお姿に、まだまだ至らない未熟な自分であることを痛感いたしました。
師は一生と言います。本当に素晴らしい恩師に恵まれていると思います。
今回のお話しを快くお引き受け戴き、日本から十二単の着付けを披露するためにオランダに来てくださいました。

何かを乗り越えるたびに気づきや新たな発見があります。初心に戻ると言うより、乗り越えた先には新たなスタートが用意されていると思いました。
オランダのゴッホ美術館での着物デモストレーションを行った翌日にはニューヨークに戻りました。
オランダで小田嶋先生と再会し、私は着物への深い慈しみの心を取り戻し、更なる心持ちで着物のことを世界に伝えたいと思いました。今、気持ちを新たにニューヨークでの仕事を頑張っています。

十二単をご提供いただきました青梅きもの博物館の鈴木先生、感謝の言葉は言い尽くせません。ありがとうございました。
着物を「世界に伝えること」その一歩を踏み出していると思います。

こちらは、当日のパンフレット表紙です。