12/19/2013

マイアミのアート・バーゼル

12月5日から8日までマイアミでアート・バーゼルが開かれました。

アート・バーゼルとは、スイス北西部の都市バーゼルで1970年から毎年開催される世界最大の現代アートフェアーです。現在は「アート・バーゼル」の名称のもと、マイアミ・ビーチ(米国)と香港でも開催され、ヨーロッパ、アメリカ、アジアにまたがる世界規模のアートフェアーに成長しています。

今年のマイアミのアートバーゼルはマイアミ・ビーチ・コンベンションセンターで開催されました。31ヶ国から258軒のギャラリーが出店し、モダンアートやコンテンポラリーアートの最新作品を展示していました。
この時期に合わせてアート・バーゼルに正式参加はしていないギャラリーのイベントもマイアミでいろいろと開かれていました。
前から気になっていたマイアミ24丁目(倉庫街にして、現代アートのギャラリーが集まっている)ところで催されるレセプションの招待状がきていたのでうかがうことにしました。ファッション関係の方からいただいた招待状でした。

マイアミの24丁目内陸側と言えば全米5位に入る凶悪犯罪多発地帯とも言われているエリアです。レセプションは夜に開かれるので、暗い夜道の中行きました。荒んだ街に急に壁絵が連なりアートエリアが出没するような感じです。写真はレセプション会場の周りです。


アート・バーゼル会期中にうかがったのは、 Kristian Schmidtさんの作品のプレビューレセプションです。彼はイギリスのウィリアム王子とベッカムとご一緒に仕事をしたことがある方で、そして日本が大好きで日本で制作したミュージックビデオがグラミー賞を受賞したことがありました。
車を止めると会場に早足で入りました。会場に入るとさすがにホッとしますね。写真は会場内、ファッション関係の方からの招待だったからかお洒落な方が沢山来ていました。

展示作品のタイトルは「ジンベイザメ シリーズ」です。着物を着ていたからか、Kristianさんご本人からお声をかけていただき東京に滞在していた時のお話しなどをしてくれました。
今回の作品の撮影はフィリピンで行ったとのことでした。
写真は、作品の前でKristianさんご本人とご一緒にとりました。

荒んだ倉庫街に突如現れるアートの世界は、昔のニューヨークのトライベッカのようなイメージが浮かびました。会場内は外の雰囲気とは全く違う世界。こうした場所にギャラリーが集中するのが不思議なようで、なんだか分かるような気がします。
写真は、会場内です。素晴らしい作品でした。


 レセプションは楽しかったですが、帰り道が怖いので短い滞在で直ぐに帰りました。

12/05/2013

小さなイチを足していこう

12月3日にアメリカフロリダにあります日本国総領事館大使公邸で天皇陛下誕生日レセプションがありました。ご招待にあずかり、昨年に続き今年も出席させていただきました。 写真は大使公邸内のプールサイドです。

昨年は一人も知り合いがいませんでしたが、今年のレセプションの会場には、私が着物の着付けを教えた方が数名と、レセプション当日に私が着付けをお手伝いした方もいました。

レセプション前に「着物を着ることを諦めていたけど、ヒロさんがいてくれたから着る気持ちになりましたのよ」と言う言葉をかけてくれた方がいました。とても嬉しかったです。
着物は心で着る物とおっしゃった今は亡き駒込和装学院の学院長、鈴木先生のお言葉をいつも思い出します。

昨年、この土地のことも分からず、知り合いも一人もいない、そんなゼロから仕事を立ち上げるのはとても大変なことと想像していました。でも、着物を着たいと思っていた人たちと偶然の出会いが重なり、気がつくと、自分の仕事に小さなイチを足していました。

堀江貴文さんが書いた本「ゼロ」、その副題に「なにもない自分に小さなイチを足していく」とありました。まだ本は読んでおりませんが、この副題は心にストレートに入って来る言葉でした。

私もこれからも「小さなイチを足していこう」と思いました。一歩を踏み出すのは本当に勇気がいることです。でも、こうして1年後には小さいかもしれませんが形になっているものですね。

写真は、レセプション会場内、大使公邸のお花を生けている久保田さまとご一緒に。

11/21/2013

江戸小紋

先日、秋に似合う江戸小紋を着てみました。
赤一色の濃淡(グラデーション)からなるのですが、近くで見ると一色染めとは思えないほど多彩に見えます。とても繊細な柄で出来ているからなのでしょうか。もみじが描かれているのですが、秋の赤く染まる紅葉が風に揺れているかのようにも見えました。

江戸小紋染色家の小宮康孝さんの語りの中に、
江戸小紋の細かい柄、その美しさについて、「結局“無”ではないかと、最近、思うようになりましたね」と言います。
目色の白と、地色との細かく規則正しい配列の中へ、何もかもが吸い込まれてしまいそうな、透明な美しさ。一見、無地としか見えない一色染めの中に、みごとに染めあげられた江戸小紋の細かい柄は、「見えないところに創意を凝らす」とも言っています。
この言葉こそ、江戸小紋の真髄なのではないのかと思いました。

そして、小宮さんの語りが載っている本を読むと「時代と共に生きてこそ」と言う物作りの大切な視点を持っていることが書いてありました。
「親父(小宮康助さん)は、いつも『江戸小紋だの、伝統だのといっても、実用から外したら保存は不可能だ』といってました。あれだけ古い型紙を大事にした親父でしたが、それを生かす方法は実は大胆でしたね。」と小宮さんは言います。
時代の流れにとり残されたものは、いかに優秀なものであれ、ほろびていくしかない。“江戸小紋を現代に生かす”方途をもっと試るべきだと語ります。

「地味、渋い」と昔の人は江戸小紋をこのようにイメージすることが多かったそうです。華やかとは違いますが、小粋な映える着物として、現在の方が着こなしをしやすい着物だと思います。

-参考、語り抜粋「江戸小紋 華麗な江戸の伝統美 日本の染織6」泰流社刊-

こちらの写真は、本に載っていた小宮康孝さん作品の江戸小紋。柄は「地落ち梅と唐草」

こちらの写真の江戸小紋の柄も、本に載っていたもの。柄は「丁字鮫」


以前、ブログに伊勢型紙のことを書きました。関連参考までに。

11/07/2013

手作りメッセージカード

生け花インターナショナルから、生け花の講習会の時に着物についてレクチャーをしてほしいとご相談がありました。

先週、生け花インターナショナルの久保田さんが、私のスタジオにお越しになりミーティングをいたしました。
その時に、久保田さんの手作りであるメッセージカードをいただきました。

素晴らしい作品です。
メッセージカードで使われている着物の余り布は江戸小紋、なんと人間国宝の小宮康孝です。驚きました。

他にも折り紙で蛙などが作られ風情があり、メッセージカードとして使うのではなく、額に入れて部屋に飾っていたいと思うものばかりでした。

生け花をする方たちは、季節を感じる創作が上手いのだろうなって思いました。
生け花の世界と着物の世界は、季節を表現する上でとても近いものだと思います。

Mieko Kubotaさん作品のメッセージカードの写真をのせますね。






10/24/2013

盆踊り

アメリカのフロリダ州の森上美術館で、10月19日の土曜日に盆祭りがありました。
この森上美術館が建っているフロリダのボカラタンに、 1900年初頭フロリダで最初の日系移民の入植地(ヤマト・コロニー)があり、京都府宮津出身の森上さんもこの入植に参加した一人でした。森上さんはこの地で成功をおさめ、所有していた土地をパームビーチ郡とフロリダ州に寄贈し、森上さんがヤマト・コロニーの記憶をとどめるよう希望したことから創設されたのがこの森上美術館です。美術館近くには「ヤマト・ロード」という道路まで走っています。

毎年夏に盆祭りが開かれるとのことですが、夏はハリケーンシーズンで大嵐に見回れることが多く、気候が安定している10月に今年は催すことになったそうです。 

盆祭り当日は晴天で、常夏のフロリダでも過ごしやすい涼しい風が時折ふいていました。
今回、私はその盆踊りに参加させていただきました。その時の写真です。 
盆祭りは、午後3時〜8時まであり、お祭りの間に3回ほどステージで太鼓を囲み盆踊りをしました。 

盆踊りは、地方色が強いので、催される地方により踊りは違いますが、海外にいると日本のいろんな地方出身の方たちや現地アメリカの人たちも参加するので、いろんな地方の盆踊りをしました。 

また、盆踊りの季語は、「秋」なのだそうです。 
こちらが、今回、森上美術館で催された盆踊りの題名です。 指導してくださいましたのは、三堀先生です。

1回目—女踊り
花笠音頭(山形)
相馬盆唄(福島)
桜音頭

2回目—女踊り 
花笠音頭 
宮津節(京都) 
桜音頭 
宮津小唄(京都) 
相馬盆唄
東京音頭

3回目—男踊り 
全国ご町内音頭 
日本太鼓 
ソーラン節(北海道) 
相馬盆唄
オハラ節(鹿児島) 
炭坑節(福岡)

歌詞を歌うと地方の特色が見えてきて面白いです。
女踊りの時は、お揃いの浴衣で、帯の結びは「二枚片わな」です。
男踊りの時は、ハッピを着用しました。  

着付け士でもある私ですが、盆踊りの衣裳は三堀先生に着付けていただきました。着付けていただいている時に補整のタオルが落ちそうになったので落ちないようにささえようと手を出してしまい、三堀先生から「着付けをしてもらう人は手を出してはいけません」と言われました。その一言で着付けをしていただく時の心構えを思い出しました。心に緊張が走り、とても良い経験になりました。アメリカに来てから着付けをしていただくという機会が無かったので、今回、三堀先生に着付けをしていただいて本当に良かったと思います。
日本で私に着付けを教えてくれた先生は、「人に着付けてもらうのもとても勉強になるのよ」と、よく言っていました。本当にいろんな気づきがあります。

この写真は、東京音頭を踊る時に観客の皆様も参加していただいて皆様で踊っているところです。 三堀先生がお客様に踊り方を教えています。恐れ多くも私は三堀先生の隣で踊らせていただきました。


10/10/2013

Kimono Hiro in Floridaのホームページを開設いたしました


この度、フロリダのマイアミで、Kimono Hiro in FLのホームページを開設しました。

昨年末にマイアミ日本国領事館の領事から大使公邸で開かれた天皇陛下誕生日レセプションに招かれました。着物をお召しになっている方を多く見かけ感動しました。
そのレセプションの席で当時の総領事にご挨拶させていただく機会に恵まれ、今年に入りレセプションにいくつかお招きいただきました。川原総領事からは「このフロリダでも着物を広めてください」と素晴らしいお声をかけていただきました。

1年ちかく準備期間がかかってしまいました。
ホームページ開設のお手伝いをしてくださいました方、また仕事を始めるにあたりご指導してくださいました方たちに深く感謝しております。ありがとうございました。

今後とも宜しくお願いいたします。
ホームページ  http://www.kimonoflorida.com/index.ja.html


10/03/2013

重要文化財の京友禅

前回、ニューヨークタイムズに京友禅染についての記事が載ったことをブログに書かせていただきました。

友禅について、もう少し触れておきたいので、素晴らしい着物を紹介します。 
約2年前の2011年10月29日〜12月11日まで、京都文化博物館で「京の小袖—デザインにみる日本のエレガンス」と言う展覧会がありました。 
大変貴重な江戸時代を中心とした小袖180もの作品が展示されました。

展示された1つ1つに詳細の解説が付いている本展覧会用に作られた本を、この展覧会を見に行った知人がアメリカの私のところに本を送ってくださいました。 写真は、本の表紙です。

本を見ているだけでも鳥肌が立つほどの感動があり、あまりに凄くて「直視出来ただろうか?」と眩しいほどに輝いている作品ぞろいでした。今後、一同にこれだけの小袖を見る機会に恵まれることがあるのかと思うと、実際に展覧会で見ることが出来なくて本当に残念に思いました。
この写真の作品は、重要文化財の束熨斗文様振袖です。 
–作品の詳細– 
紅紋縮緬地/絞り染め・友禅染・摺匹田・刺繍・摺箔 
時代は、江戸時代後期 
所蔵者は、友禅史会 

着物は劣化が早いため、現存する重要文化財は数点とうかがっております。こちらは、その中の1つです。 

この小袖が今の所蔵者である友禅史会に渡った経緯が興味深かったです。以下、本からの引用です。 
「本作品は、戦前に京都で活躍していた古美術商であり研究家でもあった野村正次郎が手元で大切に保管する品であったという。大正10年(1921)に来日したロックフェラー二世の篤志がきっかけで、野村から現在の所蔵者である友禅史会へ寄贈された。」 

写真の小袖以外にも、本展覧会ではロックフェラー二世の篤志によって寄贈されたものが多く展示されていたことが作品リストからも分かります。 
寄贈の時にロックフェラー二世は「愛する京都に寄贈する」と言ったそうです。小袖を贈る形で京都に残してくれたことは、情愛深い話だと思いました。そして、アメリカに持ち帰ることが出来ないほどに、日本から離れてはいけないような素晴らしい小袖だったとも思います。 

着物は日本にあってこそ、と言う考え方にも思える言葉になってしまい、私がしている仕事と逆方向のようにもとらえられてしまいますが、着物が「芸術」や「ファッション」になったときに、矢印が世界へと向くのではないのかと常日ごろから思っております。
既に、世界のファッションデザイナーさんたちが着物にインスピレーションを受けて洋服の中にも生地やデザインや形状などが一部浸透しています。 

この本に寄稿している切畑健の「鑑賞にあたって」の文中最後に、このように書いてあります。以下、抜粋。 
「各国各地の民族衣裳は、その地域と密接な関係をしめしつつ、意匠や技術で十分に堪能させますが、それらを日本のキモノ、特にこの展覧会でご覧にいれるこれらとはどこかに一線が存在すると考えられてなりませんでした。しかし民族衣裳に代わる言葉も思いつかないでいました。ところが、1993年のことです。アメリカ、ロサンゼルスの州立博物館で、江戸時代の小袖展が開催されて、日本からほぼ160領の小袖が運ばれました。その展覧会名が「When Art Became Fashion」とあり、感動しました。小袖美の原点は「Art」であるというわけです。」 

この切畑健の言葉に、着物を世界へと提案したいと思った時の初心を思い出します。

9/19/2013

ニューヨークタイムズ紙に京友禅の記事

約一ヶ月前の8月20日のニューヨークタイムズに、京都の友禅についての記事が載っていました。
http://www.nytimes.com/2013/08/20/fashion/hand-crafted-kimonos-japans-wearable-masterpieces.html?pagewanted=all&_r=0

記者は、京友禅の手書き友禅の職人さんを取材し、その制作過程に感銘を受け、その複雑な制作過程を沢山の写真とともに記事にしています。そして、どれほどに人の手が加わっているか、また、着物の制作過程で京都と言う自然が活かされているかが書いてありました。

今現在、着物で作る過程で使われる加茂川の水も汚くなり、友禅の染料の洗い流しには適さなくなったと聞いたことがあります。

また、自然の変化(環境変化)だけでなく、職人さんが激減し、後継者が見つからず、この記事に書かれているような丁寧な仕事の過程で仕上がる着物をつくることが死活問題となっているのも現状としてはあることを着物の業界の人からお聞きする機会が増えました。

良い着物を、次世代につなげるには難しい課題が沢山あります。伝統技術が繋がるように、良い着物が出来上がる素晴らしい伝統技術を広く知っていただきたいと思うことがあります。

取材された着物工房では伝統技術を受け継ぐだけでなく、過去数百年間の着物の柄のデータベースと、それを活かしたコンピュータ上の着物デザイン作成を導入している様子がえがかれていました。職人さんたちが伝統技術の枠を越え、新しい技術を導入し、着物制作に励んでいることは、次世代に向けての明るいニュースだと思います。

その着物工房についての次の言葉が印象的でした。
“It is a company, but it isn’t just a business. It creates a culture of Japanese beauty.”
「会社ではあるが、単なるビジネスではありません。日本の美の文化を作り出しているのです。」

3年前のブログでイギリスの新聞に掲載された「着物をつくることその物が死にかけているアートである」という記事を紹介しました。
http://blog.kimonohiro.com/2010/10/blog-post_30.html

しかし、先々を懸念するばかりでなく、京友禅の制作過程について、記者が取材した「今の感動」をニューヨークタイムズと言う世界に情報の発信力がある新聞で記事にすることで、着物の真価が伝わるのだと思いました。
是非世界中の多くの人達に読んでいただきたい記事です。

素晴らしい物や本物であれば、必ず気がつく人がいるのだと思えた記事でした。

9/05/2013

根津昌平「きもの語り」-鏡を見ない 2

前回のブログの続きとなりますが、着付師、根津昌平「きもの語り」という本に書かれている。
「楽屋で俳優さんの着付けが終わって、その人が鏡を見ないでスッと楽屋から出て行くようになれば一人前なんです。」

この根津さんの一言は、着付けの仕事をしていて、何度も私も思います。

違うシチュエーションではありますが、着付けをしている最中に、お客様が片時も目を離さずに着付けの進行具合を見ていたり、お客様が口をはさんだりしてくると(ただ単なる質問の時もありますが)「この着付けに納得していないのかな」と思うこともあります。

私の場合、着付けのご依頼で伺うお客様は、はじめてお会いする方が多いので、鏡を見ないでスッとお出かけになってくれると言うほど信頼関係はありませんので、着付けが完了すると鏡で確認していただきます。

お客様が鏡を見直さない、着物を直そうと着物を触れないでいると、とても良い仕事が出来たと思います。
自分がどんなに上手く着付けが出来たと思っても、当たり前のことですが、着物を着ているお客様ご本人の納得がいく着付けをしないと、良い仕事にはならないと言うことにも通じていると思います。

根津さんの本に書かれている中で、着物スタイリストとして私が指針にしているところだけを抜粋してしまいましたが、語り切れない、ブログでは書き切れないので、着付け師を目指している人や、また着物を着られる機会が多い方には、おすすめの本です。

本の締めに載っている根津さんの語りには、
「自分という人間は世界に一人しかいません。同じ顔や体型を持っている人なんていない。きものを制服のように着たって、面白くも美しくもありません。それぞれの個性を生かして着てほしい。」(「きもの語り」より抜粋)

練習台のマネキン人形に着付けをしている訳ではないので、個のストーリーが汲める着付けと言う立ち位置を大切にしていたいです。

写真は、「きもの語り」の本に載っているもの。
根津さんが女優さんに着付けをしている写真を見ていると、神経が研ぎすまされるような感覚を得るほど感動します。

8/22/2013

着付師 根津昌平「きもの語り」からの気づき 1

2ヶ月ほど前の6月にアメリカで世界有数に入る資産家のご夫婦から着物スタイリストとしての仕事のご依頼がありました。あるパーティーに出席する時に夫婦そろって着物を御召しになりたいとのことでした。
パーティーの主旨にそった着物選びから任されました。

着物の試着のため、数着ほど着物や帯を持参でご依頼の方の家に伺いました。
うかがうと、奥様がパーティーに着物を着ることを迷われていました。「暑いのは避けたい。帯は苦しいし、幅が広いとクールではない」と試着前から言われてしまいました。アメリカで着物の仕事をしていて、残念なことに着物のイメージに「苦しい、重い、暑い(もしくは寒い)」と言う人は少なくないです。暑い寒いは、着物には季節感が無いように思われているのだと思います。四季の季節に適した生地(素材)は数多にもわたり、柄にしても季節感を表現しているものこそ着物なのですが、季節感が着物の中で伝わっていない点はいつも残念に思います。

パーティー当日、ご夫婦そろって着物を御召しになり、その仕事が無事終わりました。その仕事の後に、根津昌平「着付師一代 - きもの語り」(聞き書き:岡田喜一郎)の本を読み直したくなりました。上の写真は、その本の表紙です。
私が着付師としてとても尊敬している根津昌平さん。正確に言うと、着付け師というより衣裳付けでしょうか(衣裳付けとは、お芝居の世界での言葉で、役者の役柄や体形にあった衣裳を選び、合わせ、着付けをします)。

その本の序幕には「俳優に信頼されて一人前」と書いてありました。
今回のご依頼のご夫婦は世界に名高いセレブリティーで俳優ではありませんが、着物選びから任されることの信頼を得てこそ着物スタイリストなのだと思うところがあって、衣裳付けに似た立ち位置を感じました。ご依頼のご夫婦の着物を着て行く場面に適した装いから好みに合った着物を提案し、その人たちらしい着こなしの着付けをするまでトータルでコーディネートをしてみるとストーリーが存在しているかのようにも思います。私が目指す着物スタイリストの仕事は、ストーリーが存在している衣裳付けのようにありたいと思っていたことに気がつきました。

その衣裳付けという仕事ですが、根津さんが言う衣裳付けの仕事とは、「美しく着せること。苦しくないように着せること。着崩れしないように着せること」と本に書かれていました。
前に笹島寿美先生に時代衣裳の着付けを直接ご指導をいただいた時に、「苦しい着付けは逆に着崩れる。無駄な負荷がかかっている」と科学的な言葉をいただき、私の中で大きな気づきがありました。
苦しくない着付けというのが、緩い着付けで着崩れするのではないのかと不安に思う方は多いと思いますが、笹島先生の言葉は「苦しくない着付け」と「緩い着付け」とは天と地ほど違うようにも聞き取れました。

今までお客様から言われた言葉で嬉しかったのは、「着物って苦しかった思い出しかなかったけど、そうでもないのね。1日着ていたけど、着崩れもしないし、楽だった。」この一言は、本当に嬉しかったです。
苦しくない着付けや、気候に応じた季節感のある“着物”や“装い”これらをアメリカで先ずはイメージしていただけるような着物の提案をすることが必要であるように思いました。

8/08/2013

メルセデスベンツファッションウィークの水着版

マイアミのサウスビーチでメルセデスベンツのファッションウィークの水着版がありました。
着物と水着なんて、共通する所があるのか分からなかったのですが、NYファッションウィークでステージを持っているデザイナーさんからも招待状をいただいたので、参加登録して見に行きました。いろんなデザイナーさんからも招待状をいただきました。ありがとうございました。

参加してみて、とても楽しかったです。会場は、The Raleighというホテルで、プールがとても有名で映画のロケ地にもよくなっていると聞きました。上の写真は、プールサイドからとった写真です。
プールサイド奥には、ファッションショー会場であるテントがありました(こちらの写真はテント内)。プールサイドには飲食が出来るところもあり、皆さんカクテルなどを手に持ったまま、テント前に並び談笑している様子で、リラックスしたファッションショーでした。
スケジュールも夜に催されているファッションショーが多く、レセプションと兼ねているのもありました。NYファッションウィークは昼間にスケジュールがギッシリつまっていて、まるで学会会場のように次々とステージを見に行くのですが、今回のサウスビーチの水着版ファッションショーではその忙しさはありませんでした。こうしたホテルのプールサイドでのファッションショーを考えつくなんて、アメリカンな感じで良いなって思いました。
水着のファッションショーですが、想像を超えてエレガントで驚きました。ビビットな色彩でのインパクトや、パンチのあるデザインもあり、帽子やサンダルなどのアクセサリー類と水着とのセットでデザインされているものもありました。考えてみると、水着は形状が限られているから、その中でどれだけ個性を出すか、流行のビジネスラインを作っていくかは、難しいようにも思いました。NYファッションウィークでステージを持っているデザイナーさんも参加しているだけあって、チャレンジする価値のある世界だと思いました。

水着のショーですが、水着だけでなく、上に着るような服も何着か見かけました。
不思議と、暑く日照時間が長い季節ほど、長袖を着ることってありますよね。日焼けしないようにでもありますが、逆に長袖のほうが直接太陽の光が肌に当たらなくて涼しいということがあります。

紗の着物って、暑い夏には良いのかなって思いました。
夏に着物を着ているだけで、「暑くないですか?重くないですか?」と声をかけられてしまうことがありますが、日本の茶道教室の先輩が、「着物って涼しい」と言っていたことが印象に残っています。

見に行きましたファッションショー(水着版)の写真をいくつか貼ります。写真は、A.CHE SWIMWEAR / AGUACLARA SWIMWEAR / AQUARELLA SWIMWEAR / CAITLIN KELLY SWIMWEAR









以下の写真は、MINIMALE ANIMALE。パンチがきいているという表現も変ですが、そんな印象です。とても人気のあるデザイナーさんでした。





水着のファッションショー、素敵な会場と楽しいショーでした。

7/25/2013

ローリー・シモンズ (Laurie Simmons) Geishaシリーズ3部作

1年と8ヵ月ほど前になるお話しで、2011年10月19日と20日に、ニューヨークを拠点に世界のアートシーンで活躍するLaurie Simmons(ローリー・シモンズ)さんからのご依頼で、ラブドールをローリーさんイメージのGeishaスタイルにする作業をしました。

この作品は3部作あり、3部作ともローリーさんから全てご依頼いただき、着物スタイリストとしてのご依頼だけでなく、ヘアセットやメイクのセッティングも任されていました。
2作品目での作品作りにご協力いただいたメイクアーティストの三澤さんがヘアスタイリングも担当してくれて、私が用意した鬘にローリーが求めるアレンジをくわえていただき、ラブドールにはGeisha風に白塗りのメイクをしていただきました。

今頃になって、3作品目であるこの仕事をブログに立ち上げようと思ったのは、先日、ローリーシモンズさんが、日本で個展を開き、そして本も出版され、その本を見ていたら私に仕事を依頼した経緯や私がスタジオにやって来た時の小話が載っていて懐かしく思いつつ、ブログに3作目の作品づくりの作業について書いてなかったなって思いブログを立ち上げようと思いました。(ただ単にブログに立ち上げるのを忘れていたと言うのもありますが・・・)
上の写真は先日発売されたローリーシモンズさんの本で、こちらの写真は、私が着物スタイリストとして作業させていただいたところのページです。

3作品目は、本当に出来が良かったです。
着物は紫で、本物の引き着です。
ローリーさんのアシスタントのレイチェルさんの背中には、青紫の着物を着た女性の入れ墨がありました。その入れ墨に描かれている女性をラブドールで作って欲しいとローリーさんは言われました。
前回の2作品目は青の着物、前にローリーさんとお話ししていた時には、「次回は黄色の着物で作品作りをしたいと思っている」と言われたので、そのイメージを自分なりに作っていたのですが、急に予定変更。「入れ墨として描かれている女性をラブドールに作り上げて欲しい」とのあまりに突拍子もない発想に驚きました。
やはり、芸術家は面白い視点があるけど、作業人の私としては急に予定変更されて戸惑うばかりでした。でも、不思議なことに引き寄せるのですね。そうしたローリーさんのイメージをハッキリと汲めると、そうした着物が見えてくるというか、3作品目にして、やっと何かローリーさんの感性が手に取るように分かるようになっていました。でも、このラブドール(紫の着物を着たのが)最後の作品、得てしてそう言う物ですね。

この着物(引き着)は迫力があり、人形相手と言うのが、なかなか思うに着物の表情を出せずにいるような感じで、そこを何とか表情を出せる着付けに挑戦しながら、メイクアーティストの三澤さんの迫力あるメイクに、引けを取らないようにがんばりました。
写真は、ローリーさんのスタジオで出来上がったところのラブドールです。魂が吹き込まれたような感じです。

写真作品の材料となる物を作る私たちの作業中に、お出かけになっていたローリーさんがお帰りになり、出来上がったラブドールを見に来たローリーさんが開口一発「ヒロ、あなたは一番どれが良いと思う?」と聞いて来たので、「この3作品目ですよ!」と答えたら、「私も、そう思う」と言ってくれました。

ローリーさんは、写真芸術家。写真を撮り終わると、アッサリとこのラブドールのメイクは落とされ、苦労して探した人形の小さな頭に合うサイズの鬘も外され、50kgほど重量のある人形(ラブドール)に着付けをした着物も外し、私は全てを持ち帰ります。全ては「写真」の中でしか生きない作品の材料を作っていると言う作業でしかありませんでした。
このローリーさんの写真作品の材料作りの作業をしていてフットいつも思うのは、海の砂浜で砂の城を作っているみたいな感じです。

でも、ローリーさんの作品集である本を見て思ったのは、決して砂の城を作る作業でしかなかったわけではなく、こうして私が携わることが出来た作品がローリーさんの写真の中で「芸術」として生き続けているのだと思えました。

日本での展覧会は、大好評だったとうかがいました。
心から、おめでとうございます!
この写真は、ラブドールにメイクをしてくださいましたメイクアーティストの三澤さんの後ろ姿とラブドールです。写真を見ていると、まるで生きている人間にお化粧をしているみたいだと思いました。

以前、2作品を作成作業した時のブログはこちらです。

1/04/2013

テレビジャパンNHK放送枠の着物スタイリスト

昨日の1月3日にテレビジャパンで放送されたNHK枠、MCのメロディーさんが振り袖、アレックさんは黒紋付羽織袴での登場でした。
この放送でながれた着物を着てのメロディーさんとアレックさんの収録は先月にありました。FCIのディレクターさんからご依頼いただき、着物スタイリストとして担当させていただきました。
無事放送され、この収録の時に仕事を手伝ってくれた方が録画までしてくださって、電話でお知らせしてくれました。
また、収録当日は、弊社の着付け師のナオコさんが、私のアシスタントとして現場で手伝ってくださいました。
メロディーさんは、可憐な印象でしたが、メイクもへアセットもご自身でするほど才能あふれる方で、お話ししていても芯のある強い美しさを持った方のように思いました。仕事をご依頼してくれたディレクターさんからは、ご依頼時に番組の動画を送っていただき、MCの二人に似合う、そしてお正月放送に合う着物のセレクトを任されましたが、私が候補をいくつかあげた着物の中で、赤い振り袖に最終決定してくれたのは、メロディーさんだそうです。本当にとても似合っていて、ご本人も気にいってくださって、嬉しかったです。
アレックさんも、黒紋付羽織袴がお似合いでした。
やはりお正月は振り袖に黒紋付羽織袴ですね。
収録が終わったあとに、メロディーさんとアレックさんは控え室で写真撮影をお互いにしていました。私も写真をとらせていただき、とても楽しい控え室でした。
事前に送られてきていた動画で、後ろ姿は映る可能性がかなり低いことは分かっていたのですが、メロディーさんの可憐な美しさを表現したくて、帯を結びました。
こうした撮影の仕事というのは、映るところだけ形になっていれば良いと言う考え方もあるかもしれませんが、見えないところにもこだわれる事でそれが全体の美しさのバランスを作っていて、欠けてはいけないところだと思っているところが私にはあります。芸術家の方たちと作品撮りをしていた時に、痛感した点です。
今回の放送を録画してくれた方が、「二人の着物姿をもう少し見ていたかった」と言ってくれて、その言葉がとても嬉しく思いました。

写真はメロディーさんをイメージした帯結びで、花の中央には、アメリカで買ったスカイブルーの髪飾りをつけました。でも、この写真にもスカイブルーの髪飾りがうつっていない。

メロディーさんとアレックさん、控え室で自分の着物姿が珍しいのか、写真をとっているところです。