9/19/2013

ニューヨークタイムズ紙に京友禅の記事

約一ヶ月前の8月20日のニューヨークタイムズに、京都の友禅についての記事が載っていました。
http://www.nytimes.com/2013/08/20/fashion/hand-crafted-kimonos-japans-wearable-masterpieces.html?pagewanted=all&_r=0

記者は、京友禅の手書き友禅の職人さんを取材し、その制作過程に感銘を受け、その複雑な制作過程を沢山の写真とともに記事にしています。そして、どれほどに人の手が加わっているか、また、着物の制作過程で京都と言う自然が活かされているかが書いてありました。

今現在、着物で作る過程で使われる加茂川の水も汚くなり、友禅の染料の洗い流しには適さなくなったと聞いたことがあります。

また、自然の変化(環境変化)だけでなく、職人さんが激減し、後継者が見つからず、この記事に書かれているような丁寧な仕事の過程で仕上がる着物をつくることが死活問題となっているのも現状としてはあることを着物の業界の人からお聞きする機会が増えました。

良い着物を、次世代につなげるには難しい課題が沢山あります。伝統技術が繋がるように、良い着物が出来上がる素晴らしい伝統技術を広く知っていただきたいと思うことがあります。

取材された着物工房では伝統技術を受け継ぐだけでなく、過去数百年間の着物の柄のデータベースと、それを活かしたコンピュータ上の着物デザイン作成を導入している様子がえがかれていました。職人さんたちが伝統技術の枠を越え、新しい技術を導入し、着物制作に励んでいることは、次世代に向けての明るいニュースだと思います。

その着物工房についての次の言葉が印象的でした。
“It is a company, but it isn’t just a business. It creates a culture of Japanese beauty.”
「会社ではあるが、単なるビジネスではありません。日本の美の文化を作り出しているのです。」

3年前のブログでイギリスの新聞に掲載された「着物をつくることその物が死にかけているアートである」という記事を紹介しました。
http://blog.kimonohiro.com/2010/10/blog-post_30.html

しかし、先々を懸念するばかりでなく、京友禅の制作過程について、記者が取材した「今の感動」をニューヨークタイムズと言う世界に情報の発信力がある新聞で記事にすることで、着物の真価が伝わるのだと思いました。
是非世界中の多くの人達に読んでいただきたい記事です。

素晴らしい物や本物であれば、必ず気がつく人がいるのだと思えた記事でした。

9/05/2013

根津昌平「きもの語り」-鏡を見ない 2

前回のブログの続きとなりますが、着付師、根津昌平「きもの語り」という本に書かれている。
「楽屋で俳優さんの着付けが終わって、その人が鏡を見ないでスッと楽屋から出て行くようになれば一人前なんです。」

この根津さんの一言は、着付けの仕事をしていて、何度も私も思います。

違うシチュエーションではありますが、着付けをしている最中に、お客様が片時も目を離さずに着付けの進行具合を見ていたり、お客様が口をはさんだりしてくると(ただ単なる質問の時もありますが)「この着付けに納得していないのかな」と思うこともあります。

私の場合、着付けのご依頼で伺うお客様は、はじめてお会いする方が多いので、鏡を見ないでスッとお出かけになってくれると言うほど信頼関係はありませんので、着付けが完了すると鏡で確認していただきます。

お客様が鏡を見直さない、着物を直そうと着物を触れないでいると、とても良い仕事が出来たと思います。
自分がどんなに上手く着付けが出来たと思っても、当たり前のことですが、着物を着ているお客様ご本人の納得がいく着付けをしないと、良い仕事にはならないと言うことにも通じていると思います。

根津さんの本に書かれている中で、着物スタイリストとして私が指針にしているところだけを抜粋してしまいましたが、語り切れない、ブログでは書き切れないので、着付け師を目指している人や、また着物を着られる機会が多い方には、おすすめの本です。

本の締めに載っている根津さんの語りには、
「自分という人間は世界に一人しかいません。同じ顔や体型を持っている人なんていない。きものを制服のように着たって、面白くも美しくもありません。それぞれの個性を生かして着てほしい。」(「きもの語り」より抜粋)

練習台のマネキン人形に着付けをしている訳ではないので、個のストーリーが汲める着付けと言う立ち位置を大切にしていたいです。

写真は、「きもの語り」の本に載っているもの。
根津さんが女優さんに着付けをしている写真を見ていると、神経が研ぎすまされるような感覚を得るほど感動します。