4/27/2015

ビジネス・モラル

先日、2011年のニューヨークファッションウィークでコラボしたデザイナーさんが、その時に私が担当した着物のところが、あたかも自分の作品であるかのように「Kimono Now」と言う本に紹介されていました。その本は、日本文化を紹介している研究者が中心に書いた世界に向けてのキモノの本で、PRESTELというニューヨーク、ミュンヘン、ロンドンで展開している出版社から出ています。私が着物を使って作品にしたものが載っているのは、そのデザイナーさんが取材を受けたページで、私の名前は一言も書いていませんでした。

このデザイナーさんについては、こう言うことが今に始まったことではありませんでした。2011年にニューヨークファッションウィークにデザイナーさん側からコラボしたいと連絡が入り、「Hiroの名前を入れたから」とPRポスターにはデカデカと「Kimono Hiro」と入っていました。そんな感じにプロジェクトが進んでしまい、ファッションショーをどのようなテーマやストーリーにしたいのかデザイナーさんと話し合いに行っても、「日本ぽい物を出せればいいから、Hiroに任せる」と言われたので、そのデザイナーさんの途中経過の作品を見させていただき、どのキモノを使うかと言う部分から私が決めなくてはいけない珍しいケースでした。そして、キモノだけではなく、そのデザイナーさんがデザインする洋服に帯を結んでほしいと、そのデザイナーさんに生地の提供をしていた京都の帯屋さんの生地を出され、デザイナーさんに組み合わせを聞くと、それも「任せる」と言うので、コラボだから仕方がないかと思い、いそいそと頑張りました、、、。が、しかし、ファッションショー当日、なんとプログラムに私の名前がない!その上、私が担当したところが、数社のファッション雑誌にデザイナーさんの名前だけで載っていて、コラボと言うのははじめだけでした。終わってみたら、その露骨さに驚くだけでした。

ファッション業界のクレジットを得る(名前が載る、肩書き)については、いつも問題が付き物と言うイメージが拭えないほど多発しています(クレジットとは、皆様がよく耳にするのが映画などでエンド・クレジットではないかなって思います。監督や俳優の名前など)。
当時、私は詳細について決めた契約書がないまま、このような大きな案件を請け負ってしまったため、こうした問題も、そのデザイナーさん自身のビジネス・モラルだけの範囲を越えないことでの問題でしかありませんでした。
ニューヨークには、アートやファッション業界にチャンスを求める人がいろんな国から集まるため、細かい契約書を作成せずにその世界に飛び込んでしまう人も多いです。そのため、ビジネス・モラルに委ねられている部分が大きい業界でもあります。私の場合は、チャンスをものにしたいというのとは少し違い「まあまあ有名なデザイナーさんだし、私自身信頼している京都の帯屋さんと仕事をしているデザイナーさんだし、PRポスターにはデカデカと「Kimono Hiroとコラボする」と書いてあるし」と、そんな理由だけで、デザイナーさんを微塵も疑いませんでした。
そして、このような結果となり、自分が仕事に対し甘いところがあったことを知り、それからはどんなに小さいことでも契約書を立ち上げるようにしました(あー、ここはアメリカなんだと実感した時でした)。また、私も、私から仕事をお願いするヘアアーティストさんやメイクアーティストさんへ、クレジットはきちんとお約束してあげれるように出来る限りクライアントと交渉したりするようにしました。
もしかして、そのデザイナーさんは私が名前を載せてもらえなかったことを気にしていないと思っているかもしれません。でも、こうして自分が本来行った仕事の対価をいただけない時に受ける悲しい気持ちをはじめて知る機会になり、自分も他の人と仕事をする時に、こうした印象を与えてはいけないととても気を付けるようになりました。

それにしても、今回の件については、「4年前のファッションショーの私の着物を使った作品を、このデザイナーさん、いつまで使うのかな?しつこいなー」とだけ思いました。

はじめアメリカで仕事を始める時は、騙す人しかいないのではないのかと思えるほど、ビジネス・モラルなんてあったものではないような大袈裟な話を聞くことが多かったですが、実際には、アメリカの大手企業の広告などを皮切りに仕事が軌道にのったので、あまりそのようなトラブルはなくきました。(そこが、私が相手に契約を任せてしまう姿勢になった反省すべき点です。)
ファッション雑誌VOGUEなどは、私が担当した部分については「◯ページに載っています」とのレター付きで、掲載後に雑誌までご丁寧に送って来てくれました。ここ数年仕事をご一緒にする機会が何度かあった世界的に有名なスタイリストのパティーさんは、ビジネス・モラルの高い人で、クレジット(名前載せ、肩書き)をどのように載せるかを何度も確認の連絡をくれました。彼女の仕事のプロ意識の強さや誠実さに、「有名になってもこういう人でいられるって凄いことだな」と、いつも考えさせられます。

ビジネス”モラル”と言うグレーゾーン、そこを自分の都合良く上手く利用する人もいれば、そのグレーゾーンでこそ、互いの信頼に委ねられるだけの仕事の幅を利かせられる誠実さを出している人もいます。

確かに、ニューヨークのようなところでは世界を舞台に仕事をしている人たちが集まるので、綺麗ごとでは終わらないビジネスとして勝算を考えなくてはいけない世界もあります。どこでこのビジネス・モラルと折り合いをつけて行くかだと思いました。

Kimono Nowについて知ったのは、私の仕事を手伝ってくれている人から連絡が入り「またHiroさんの作品を使っているよ、このデザイナー」と言われ、4年前の作品が載っているのを知り、その背景などであったことも含め改めていろいろと考えさせられました。

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